ガンラトャチ棋聖の将棋博物館

阪田三吉から藤井聡太までヴィンテージ対局・名局紹介・雑談を発信しています

クイーンズ・ギャンビット 西山朋佳vs片上大輔 2020年 ヒューリック杯棋聖戦

 西山朋佳女流四冠(白玲・清麗・女流名人・女流王将)が、ついにプロ棋士になることとなった。

 女流タイトル「白玲」を5期獲得。新規定による編入資格でのプロ入りだ。

 後付けっぽい制度の問題などで紆余曲折あったが、西山さんはルールの中でしっかり結果を出しただけなのだから、何を言われる謂れもない。

 

 「もっと強い方と戦いたい、上を目指したい」

 

 という想いを存分にぶつけてもらいたいものだ。

 それにしても、この「フリークラス編入」という中途半端なあつかい、もうやめたらどうだろか。

 

  
 2020年のヒューリック杯棋聖戦。
 
 片上大輔七段と西山朋佳女流三冠の一戦。
 
 奨励会で三段まで行った西山は、女流棋士転向後も女流棋戦のみならず、一般棋戦でも活躍しているのはご存じの通り。
 
 このときも渡辺和史四段と泉正樹八段に勝利し、一次予選の準決勝に進出。
 
 勝てば、女流棋士では初の二次予選に進出の可能性が、グッと上がるという大きな一番だ。

 西山得意の中飛車に、片上は金銀四枚で固めて持久戦模様に。
 
 


 

 先手は金銀をくり出して力強い指しまわしだが、飛車角が自陣に素通し状態で、やや怖くもある。
 
 なにやら、いかにもワザがかかりそうな局面だが、まずは角筋を止めつつ上部に勢力を足して△33桂かな。
 
 くらいが、私でもパッと見で思いつくところだが、片上はするどく踏みこんでいく。

 

 

 
 


 
 △68飛成(!)。
 
 押しの強い西山相手に、負けてなるかということか、角の利いてるところ強引に飛車をねじこんでいく。
 
 ふつうは△68角成だが、▲63歩、▲64歩からの連打を嫌ったか。

 

 

 △同飛に▲65金とぶつけていい勝負だろうが、▲76の金をさばかせるし、この金出がいかにも西山好みの進撃なのが気になるところではある。
 
 それならドーンと飛車から行ってしまえということで、▲同角なら△同角成で、玉頭への角の脅威を消しながら、飛車も取り返せるから充分と。
 
 それはつまらないと、西山は飛車を取らず▲54歩と取りこんで、△同銀左に▲44歩と、こちらから襲いかかる。
 
 △78竜と逃げたところで▲43歩成と成り捨てて▲11角成と突破するも、そこで△48歩が急所の反撃。

 

 

 

 美濃囲いは、とにかくここにタタかれると一気にグラついてしまう。

 ▲39金は△68角成くらいでも崩壊。

 ▲58金は形が乱れるうえに△76竜と取られたとき、また▲56の銀取りになっているのが痛い。

 こうして、うわずった金銀を負担にさせるのが後手のねらい。

 先手苦戦を思わせたが、ここからまたしぶといのが西山将棋である。

 

 

 

 

 この瞬間に▲77金(!)と、きわどく当てる。

 

 △49歩成には▲78金と取って、△59とに▲12飛で詰み。

 

 

 それはまずいと一旦△88竜と逃げるも、▲67金とかわして▲11の馬で竜取りをかけるのが、うまいしのぎ。

 

 



 △33角に▲同馬、△同桂としてから▲58金とかわす。
 

 

 

 

 激しい戦いだが、こののらりくらりとした手順で局面の均衡を保つのが、いかにも振り飛車の腕の見せ所という感じ。

 

 馬は消されたが、金銀が連結できて後手もさほど戦果を挙げていないでしょ、というわけだ。

 少し進んで、この局面。


 
 
  
 先手が▲44香とぶちこんだところに、後手も歩で受けとめる。
 
 先手陣は少しゆがんでいるが、▲68歩の壁と▲59飛の存在が頼もしく、まだ余裕がある形。
 
 なので攻撃を継続したいが、持ち駒が角一枚ではやや戦力が足りない感じ。
 
 ここは細かい攻めで、後手陣をくずしていきたい。
 

 


 
 


 ▲15歩と突くのが、筋の良い感覚。
 
 後手陣は守備駒が左側にいるため、そこから手をつけるのはむずかしい。
 
 そこで逆方向から端歩を突きあげるのが、△42歩と詰まった瞬間なので、いかにも好感触だ。
 

 そこから進んで、この局面。 
 
 
 
 

 一目は▲33とと取りたいが、△38金、▲同玉に△57銀成とされると、後手玉に詰みはないため先手負け。
 
 かといって、飛車を逃げるようでは△59竜と底をさらわれて受けがない。
 
 先手がまいったようだが、ここで西山は起死回生の一手をねらっていた。
 
 
 
 
 
 ▲58飛と引くのが、うまい受け。
 
 一見、△同金で▲同歩には△27香成から攻めこまれるなど手番が回ってこなそうに見えるが、そうではない。

 


 
 ▲58飛、△同金に▲同歩とは取らないのがポイントで、これによって△38金と王手でせまる筋を消している。 
 
 かつ、この瞬間は▲59の歩が残って先手玉にまだ余裕があるため、▲13角から詰めろの連続でせまれば1手勝ちできるということなのだ。

 

 

 一瞬で攻防の速度を入れ替える見事な切れ味で、先手の勝ちが決まった。
 
 後手は△38金とこちらを取って、▲同玉に△35桂とせまるが、今度は▲24ととこっちの香を取れる。
 
 △87竜と追いすがるが、▲14角と王手して、△51玉に取ったばかりの香で▲65香と封鎖するのがピッタリ。
 

 


 
 
 以下、数手で片上が投了。
 
 見事なしのぎで勝利した西山は、1次予選の決勝に進出。
 
 そこでも北島忠雄七段を破って、女流棋士初の2次予選進出を果たすのである。

 

 

sharon106.hatenablog.com